ゴッホの人生 2
私は、通りの反対側に立って、今も牧師館として使われているその建物に見入ってしまいました。
オーヴェールで、彼の墓を見た直後であるだけに、まるで死の方から生を見返しているような、何とも異様な思いをしました。
そのうえ、オーヴェールの下宿の前が村役場だったように、この牧師館の前にも、オーヴェールのそれとそっくりな村役場がありました。
私は、ゴッホの『オーヴェールの村役場』を思い起し、彼が死の2週間前にあの村役場を描いたとき、このズンデルトの村役場を二重うつしにして眺めていたのではないかという思いを抑えかねました。
ゴッホのなかには、南への志向と、北へ戻りたいという願いとが共存していて、それがあの作品のなかで、ひとつに結びついたようにも思われるのです。
もっとも、そんなふうにズンデルトを想い続けてはいたものの、ここで過したゴッホの少年期は、必ずしも単に楽しかった時代と評しうるものではなかったようです。
幼いときのゴッホを知る人の証言によると、顔はそばかすだらけで、燃え立つような赤い髪の毛をした.あ少年は「一家の子供たちのうちでもっともかわいげのない子」。
しょっちゅう奇矯なふるまいをして罰せられていたということです。
むずかしい気性で、時おり手に負えぬほどわがままになり、学校でもあまりそのふるまいが粗暴になったために、女家庭教師を探すことになったともいわれています。
いずれにせよ、この少年は、人びとのあいだにあって、すでに、或る孤独のかげを引いているように見えます。
もちろんこれには生れつきの気質が作用しているのでしょうが、彼に、彼より1年前の同じ日に生れ、彼と同じフィンセントという名前をつけられ、生後数週間でなくなった兄がいたということが、気質に由来するものをいっそう強めたと考えていいでしょう。
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