ゴッホの人生 8
ロンドンに戻って間もない8月10日には、テオにあてて、こんな手紙を書き送るのです。
「親愛なテオ
『なんじらは肉によりて審く、我は誰をも審かず』
『なんじらの中、罪なき者、まず石を榔て』
そこで、君は自分自身の考えをしっかり守りたまえ。
もし、自分の考えの正しさが疑わしかったら、『我は真理なり』と断言した人の考え、あるいは、たとえばミシュレのごとき極めて人間的人物の考えに照らしてただしてみたまえ」。
ゴッホの変りようを心配した人びとは、こんなとき人びとが考えそうなことを考えます。
つまり「しばらくロンドンから遠ざければいい、そうすりゃ忘れるだろう」と。
というわけで、彼は、伯父フィンセントの口ききで、グーピル商会のパリ支店に一時転勤ということになります。
12月末には、いったんロンドン支店に戻りますが、翌年の6月には、正式にパリ勤務を命じられます。
彼はパリ転勤に不満だったらしいのですが、ロンドンやハーグならつとめられたというわけのものでもないのでしょう。